社会人になって何年か経つと、「もっと論理的に話してほしい」とか「ちゃんと根拠を示して」といったフィードバックを受ける機会が増えてきます。
特に30代になると、後輩に教えたり、会議で意見を求められたりと、場面の数も責任もどんどん大きくなっていきますよね。
でも正直、こう思っていました。
「ロジカルって結局どうすればいいの?」
感覚ではなんとなくわかる。
けれど、いざ自分が「論理的に伝える」側に回ると、何をどう考えて、どこから伝えればいいのかがわからない。
そんなときに出会ったのが、山崎康司さんの『入門 考える技術・書く技術』でした。
もくじ
日本語に合った「論理の型」がある。だからこそ日本人でも身につけられる
この本の最大の特徴は、「日本語という言語構造の中でも、論理的に伝えることはできる」と、徹底して日本人目線で書かれていることです。
著者の山崎康司さんは、企業研修やビジネスコンサルの現場で20年以上、ロジカルシンキングとレポート・ライティングを指導してきたプロ。
欧米型の“カチカチ”な論理構成ではなく、「読み手が理解しやすい日本語」を土台にしながら、しっかりロジカルに伝える方法を教えてくれます。
専門用語は少なく、図解も豊富。
読みやすい構成で、論理的な考え方に慣れていない人でもスッと入っていける一冊でした。
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書きたいことではなく、「伝えるべきこと」を書く
まず最初にガツンときたのが、「文章は書きたいことを書くものではない」という一文でした。
これは、学生時代に刷り込まれてきた「起承転結で、感想を自由に書く」スタイルが、ビジネスではむしろ逆効果になる、という指摘です。
ビジネス文書や報告書では、「書きたいこと」ではなく読み手が知りたいことを書くのが基本。
しかもその順番も、「まず結論を言う」。
この“結論ファースト”を徹底するだけで、報告メールの質はかなり変わりました。
「and」でつないではいけない?メッセージは一文にひとつ
もうひとつ衝撃だったのは、「and(=しりてが)を使ってはいけない」というルール。
「A社は倒産し、B社は黒字になった」という文は、読み手に2つのメッセージを押し付けてしまうため、論理がぼやけてしまうそうです。
この本では、「A社が倒産した結果、B社が黒字になった」というように、原因と結果、対比や条件などの“論理的接続詞”で関係を明確にすることが重要だとされています。
この考え方を取り入れるだけで、自分の文章が「なんとなくわかりにくい」理由がハッキリしました。
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自分に問う「So what?」が思考の深さをつくる
文章を書いていて、「これで伝わるかな…」と迷った経験、ありませんか?
そんなときに使えるのが、本書で紹介されている「So what?」の自問です。
- 「それで、何が言いたいの?」
- 「だから、どうすべきなの?」
こうした問いを、自分で何度も投げかけることで、あいまいな主張や浅い理由付けをクリアにしていけます。
これは文章だけでなく、日常の会話でも有効でした。「なんとなく…」で終わらせず、「だから何?」と自分の言葉に突っ込みを入れることで、自然と考えが整理されていくのです。
帰納法と演繹法を“使い分ける”ことで論理に厚みが出る
論理の展開には、帰納法と演繹法という2つの型があります。
本書ではこの違いを、実例を使ってとてもわかりやすく解説しています。
帰納法とは?
複数の事実(前提)から、ひとつの結論を導く方法。
たとえば「A大会・B大会・C大会で優勝した」→「だからオリンピックでも優勝候補だ」という形です。
結論は推論に過ぎませんが、現場では多くのビジネス文書がこの形で構成されています。
演繹法とは?
「前提が正しいなら、結論も正しい」という型。たとえば「すべての人間は死ぬ」「ソクラテスは人間だ」→「だからソクラテスは死ぬ」という形。
このとき重要なのは、「前提は本当に正しいのか?」を常に問い直す姿勢。前提がズレていれば、どんなに結論が筋道立っていても、意味がありません。
私自身、会議やメールで意見を述べるとき、この2つの型を意識するだけで、説得力や納得感が大きく変わりました。
メール・提案書・報告書に応用できる「型」がわかる
文章を構成するとき、どう並べていいか迷うことって多いですよね?
本書では、ピラミッド構造という考え方が紹介されています。
- 上に主メッセージ(結論)
- その下に理由や根拠、方法などの詳細
- それをさらに具体的なデータや事例で支える
この階層構造で書くことで、相手は「なぜそう言えるのか」がスムーズに理解できます。
さらに、1つのグループに入れる要素は最大5個までにするというルールも実用的。人間の記憶力の範囲を踏まえた設計なんですね。
また、メールの書き方については「PDF」という型が登場します。
- P(Purpose Statement):最初に主メッセージを簡潔に
- D(Detail):理由や補足を箇条書きでわかりやすく
- F(Follow-Through):次にどうするのか、相手にしてほしいアクションを書く
たとえば、「〇〇の件、承知しました。以下ご確認ください」といった書き出しのあとに、DとFを展開するだけで、相手に伝わるメールが完成します。
書き方の“見た目”もロジカルにする
文章の内容が整理されていても、見た目が読みにくければ読まれません。
本書では「段落ごとに改行+大きめの行間」「見出しや箇条書きの活用」など、視覚的に構造を伝える工夫も紹介されています。
特に、改行の取り方はブログやWeb文章とも共通しています。
たとえばこのレビュー記事のように、「見出し → 数行のまとまり → 次の見出し」という構成は、読み手の集中力を保ち、情報を整理して届けるために有効です。
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まとめ:「伝える技術」は一生モノの武器になる
ロジカルシンキングというと、論理の世界の話であって、自分には関係ない――そう思っていた過去の自分に、この本を渡したいです。
『入門 考える技術・書く技術』は、
- 書くことが苦手な人
- 自分の考えをうまく伝えられないと感じている人
- ビジネスで損をしたくない30代の男性にこそおすすめできる、まさに「論理的に伝える技術の教科書」でした。
ロジカルに考え、伝えることができれば、それだけで人からの信頼も、仕事の成果も変わってきます。
この本で学んだ「思考の型」と「伝えるための書き方」は、今後もずっと使える“武器”になりそうです。
ありがとうございました!
また次回!
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