今回は、日本の老舗の経営について学べる『百年以上続いている会社はどこが違うのか』という本をご紹介します。
この本は、老舗企業の経営哲学や家訓を通じて、持続可能なビジネスの秘訣や人間関係の本質が学べます。
著者の実体験を交えた具体的なエピソードも豊富で、富山の薬売りや百貨店松坂屋、石田梅岩の「石門心塾」の考え方など例題も豊富です。
老舗の知恵が現代でも通じる大切な教えであることを感じさせてくれる一冊です。
これからの日々の生活や仕事に、取り入れることもできると思いますのでぜひ読んでみてください。
もくじ
『百年以上続いている会社はどこが違うのか?』の概要
著者は、300年以上の歴史を持つ薬売りの街、富山での勤務を通じて、老舗の経営の素晴らしさを肌で感じ、強く興味を持つようになりました。
この経験を基に執筆されたのが本書です。
昭和54年に独立してから今日まで、著者は「いかに生きるべきか」をテーマに講演活動を続けてきました。
彼の生き方の指針となっていたのが、老舗の在り方です。
「なぜ日本には多くの老舗が存在するのか、その歴史的背景や経営哲学、家訓」
など解説していますが、単なる老舗の紹介本ではありません。
独立後や自分の事業を展開する中で、老舗の歴史や家訓から学んだことを自身の体験や意見と共に紹介し、「日々をどう生きるか」という人間の本質的な部分にも触れています。
「老舗の家訓=人の生きる道」
というのが新鮮で、家訓を読んでいるだけでも勉強になる本です。
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『百年以上続いている会社はどこが違うのか』から学び
うまくいっている企業はとにかくマメ
本書では、次のように述べられています。
- お世話になったら、すぐに礼状・感謝の便りを出す。
- 入院したと知ったら、見舞いの励ましの便りを出す。
- 逝去の報に接したら、直ちに弔電を打つ。
- 転勤・退職・独立の際には、感謝・激励の便りを出す。
- 結婚・誕生の知らせには、祝福の便りを送る。
- 贈り物をもらったら、心を込めた礼状を出す。
- 著作物が届いたら、急いでまず序文と目次とあとがきを読んで、できるだけ早く称賛の感想文を送る。
これらは老舗企業の経営方針ですが、日常生活でも人間関係がうまくいっている人たちも同じように振る舞っていますよね。
周囲の状況をよく見て、どうしたら相手が喜ぶのかを常に心がけているのです。
石田梅岩の「石門心塾」の教え
石田梅岩の石門心塾というものがあります。18世紀の日本の思想家である石田梅岩が創設した私塾です。
石門心塾は、商人や一般庶民、女性(当時女性が学ぶことはタブーとされていた)などを分け隔てなく、道徳や倫理、商業を教えていました。
石田梅岩は、商業活動を通じて社会に貢献することの重要性を説き、商人の道徳的な生き方を重視しました。この塾では、誠実さ、勤勉、信義を基本とした教えが広まり、商業倫理の発展に貢献しました。
その中で、「正直・倹約・勤勉・孝行」に徹し、自分を律して生きていくこと、つまり人間としてなすべき基本の行動を日々繰り返し実践していくことが重んじられていました。
松坂屋の教え
現在も営業している老舗百貨店松坂屋。その松坂屋の教えは、現在でも役立つ教えです。
- 公儀のご法度は厳守すること。
- お客様には丁寧に挨拶し差別しないこと。
- お得意様に火事があったらすぐ見舞いに行くこと。
- 毎晩、売上や在庫の確認をすること。
- 早起きすること。
- 博打や女遊びを禁じること。
- 毎朝、神仏を拝むこと。
老舗の家訓の共通点として、神仏を大切にすることがあります。
私達も信仰心や宗教観は別として、子供の頃から神社やお寺は身近な存在です。
神仏に拝むことによって、心をフラットな状態に保つことは重要だったようです。
老舗の家訓と教育勅語の共通点
「大日本帝国憲法」が発布された1889年(明治22年)の翌年、1890年(明治23年)に出された教育勅語は、教育の基本方針や国民道徳の基準を示した122代「明治天皇」の言葉です。
終戦後、1948年5月に衆参両議院の決議により失効しています。
私自身初めて知ったものですが、失効してしまったのが理解できないほど、大切なことが書かれています。
- 孝行(親に孝養を尽くしましょう)
- 友愛(兄弟・姉妹は仲良くしましょう)
- 夫婦の和(夫婦はいつも仲睦まじくしましょう)
- 朋友(友達は互いに信じ合って付き合いましょう)
- 謙遜(自分の言動を慎みましょう)
- 博愛(全ての人に愛の手をさしのべましょう)
- 修学習業(勉強に励み職業を習い身に付けましょう)
- 智能啓発(知識を養い才能を伸ばしましょう)
これらの言葉は、昔から祖父母に言われてきたものです。
老舗の経営においても、日常生活においても非常に大切な教えであると感じます。
日本特有!?富山の薬売りのビジネス法
富山の薬売りの三大特徴は次の通りです。
- 「先用後利」(お客様に商品を必要な時に用いてもらい、代金は後日支払ってもらうという富山売薬の基本理念)
- 「配置販売」(お客様のところに薬を預け、数か月後に巡回訪問して補充するシステム。これが富山の薬売りの営業形態です)
- 「懸場幌」(薬売りが回る地域を懸場と称し、その地域の顧客台帳を指します。懸場帳には、顧客の住所氏名・家族構成・使った薬の種類と数量・集金額などが記されています)
これら三つの仕組みが、顧客志向の基本姿勢と顧客管理の徹底につながり、富山の薬売りの事業を300年以上も存続させている土台となっています。
特に、3の顧客情報のリスト化は非常に重要で、顧客情報を詳細に管理していることで、何かあったときにお金以上に価値を持ちます。
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『百年以上続いている会社はどこが違うのか』の感想
感想
老舗の経営について書かれていますが、その内容は自営業の経営に役立つだけでなく、日常の人間関係や組織内での対人関係など、幅広い場面で活用できる原理原則が書かれていました。
日本人特有の宗教観や小さな頃からの教えが現在でも有効であることを再認識し、これからも自信を持って意識していこうと思います。
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おわりに
『百年以上続いている会社はどこが違うのか』は、日本の老舗企業の経営哲学や家訓を通じて、持続可能なビジネスのあり方を学べる一冊です。
著者の実体験を交えた解説は、単なる経営論を超え、日常生活や人間関係にも応用できる普遍的な教えです。
特に、富山の薬売りのビジネス法や松坂屋の教え、石田梅岩の「石門心塾」など、具体的な事例を通じて学ぶことができるため、非常に実践的です。
この本を通じて再認識したのは、日本人特有の宗教観や道徳観が、現代でも重要であるということです。
これからもこの教えを意識し、日々の生活や仕事に活かしていこうと思います。
読者の皆さんにも、この本を通じて、長く続く企業の秘訣や人としての在り方について深く考えるきっかけとなれば幸いです。
老舗の知恵を活かして、自分のビジネスや人間関係をより良いものにしていきましょう。
ではまた次回。
ありがとうございました!
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