日々、仕事や家事、そして人間関係に追われていると、つい「気遣い」や「丁寧な暮らし」という言葉が遠く感じられることはありませんか?
毎日をこなすことに精一杯で、立ち止まって自分や周囲と向き合う余裕がない、そんなときこそ、心の片隅に響いてくるような言葉が必要になります。
今回ご紹介するのは、ちこさんの著書『いのちのごはん』です。
「食べ方は生き方そのもの」という一文から始まる本書は、食や暮らしを通して、自分自身の内面と丁寧に向き合っていくためのヒントにあふれた一冊です。
著者のちこさんは、「料理の原点は命を祝福すること」「考えて食べたら我(エゴ)に変わる」などの言葉を通して、日々の食卓の先にある“生き方のあり方”を伝えてくれます。
栄養士として活動しながら、「食を変えれば人生が変わる」という自身の実体験をもとに、“ゆにわ流”という独自の料理スタイルを築いてきたちこさん。
今回は、私がこの本を通じて得た4つの気づきを中心にまとめました。
何気ない日常を、ほんの少しやさしく、ていねいに変えてくれるヒントが、ここにはあります。
もくじ
モノを愛したら、モノに愛される
「モノには心がある」という言葉を、あなたはどう受け止めますか?
私たちはふだん、モノを“使うもの”として無意識に扱いがちです。
しかし、ちこさんは本書の中で、すべてのモノには気が宿っていると語ります。
服、器、調理道具、家具・・・
それら一つひとつを「自分の体のように大切に扱う」ことが、やがて自分自身を守る力になるのだと。
この章で私が特に印象に残ったのは、「モノを愛したら、モノからも愛される」という一文です。
それは、まるで人間関係と同じような感覚。大切にされた人はその気持ちに応えようとするし、粗末にされた人は、心を閉ざしてしまう。
モノもまた、そうなのだと。
思い返せば、私も気に入っていたマグカップを何度か割ってしまった経験があります。
そのときの共通点は、「急いでいた」「別のことを考えていた」など、“モノに意識が向いていなかった”こと。
モノを大切にするということは、同時に「今この瞬間に意識を向ける」ということでもあるのかもしれません。
本書では、モノへの丁寧な関わりが、自分自身への優しさや、他者への気遣いにもつながっていくことが語られています。
つまり、「モノに対する態度」が、私たちの“生き方そのもの”を映しているのです。
「意識」を注ぐと毎日が新鮮になる
ふだん何気なく行っている行動、たとえば、皿洗いや掃除、出勤の準備。
そういった繰り返しの中で、どれだけ私たちは「意識」を注いでいるでしょうか。
ちこさんが語る「お皿が割れるとき、それは100%その作業に意識が注がれていないから」という言葉は、とても衝撃的でした。
確かに、私たちが日常で起こす失敗の多くは、「なんとなくやっていた」ことが原因かもしれません。
意識がどこかに飛んでいて、今やっていることに本気で向き合っていない、それが積み重なることで、暮らしの中の「雑さ」や「余裕のなさ」につながっているのではないか、と気づかされました。
またちこさんは、毎朝、夫の顔を見るたびに「君は誰?」と思うそうです。
それは、愛が冷めたわけではなく、むしろ「毎日を新鮮に感じようとする心の姿勢」なのだと語られています。
どんなに当たり前の風景でも、毎日が初めて見るような気持ちで接する、それこそが、丁寧に生きるということなのかもしれません。
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気持ちいい暮らしが心も整える
ちこさんは「いらないモノがあるだけで、気持ち悪いと感じる」と言います。
それは単に整理整頓の問題ではなく、もっと感覚的で深いところ「空間の気」が乱れるという意味なのです。
汚れている場所や、不用品が放置されている空間には“邪気”が生まれやすく、そこにいる人の心や身体も知らず知らずのうちに影響を受けてしまう。
つまり、身の回りの状態は、そのまま自分の内側にも影響を及ぼしているということ。
私たちは日々、無数の「気持ち」に触れながら生きています。
なんとなく疲れる空間、なぜか落ち着く場所。そこには、目には見えない「気」の流れがあるのかもしれません。
本書では、そんな「気持ち悪さ」「気持ちよさ」を大切にするようにと語られています。
「気持ちがいい」と感じる場所に身を置く、「気持ちがいい」と感じる人と一緒にいる。
そうすることで、自分自身も自然と整っていくのです。
私も実際、本書を読んだあとに、ずっと使っていなかったキッチンの隅の棚を片付けました。
それだけで、なぜか呼吸が深くなった気がして、料理をする時間が少しだけ楽しみに変わったのを覚えています。
「感覚を信じる」というシンプルな生き方が、こんなにも心を軽くしてくれるとは思いませんでした。
感情に振り回されない、自分の俯瞰力を鍛える
最後にご紹介したいのは、ちこさんが語る“感情の扱い方”についてです。
本書では、感情に振り回されてつくった料理は「浅い料理」になると書かれています。
逆に、感情を超えて作られた料理は「深い料理」になると。
これは、料理に限らず私たちの日常の行動すべてに当てはまる話ではないでしょうか。
たとえば、イライラしながら書いたメール、焦りながら行った報告、落ち込みながら立てた計画。
どれも結果として“浅く”なってしまい、相手にも伝わってしまうものです。
ちこさんが勧めているのは、「自分を頭上15cmから見る」こと。
つまり、俯瞰の視点を持つということです。
今、自分は何に反応していて、何を感じていて、どんな行動を取ろうとしているのか。
いったん、心の階段を少しだけ上って、自分を眺めてみる、それだけで、感情に振り回されるのではなく、自分で選びとる行動ができるようになります。
この視点を得るだけで、毎日のストレスやイライラが少しずつ減っていくのを実感できます。
料理も、会話も、仕事も、子育ても、すべての場面で「深い自分」とつながることができる。
そんな方法を、ちこさんは丁寧に教えてくれています。
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まとめ:ていねいに生きるということ
『いのちのごはん』は、レシピ本のようでいて、生き方そのものを見直すきっかけを与えてくれる一冊です。
「料理の原点は命を祝福すること」
「何を作るか、ではなく、誰のために作るか」
「調理台は意識、冷蔵庫は無意識」
こういったちこさんの言葉の一つ一つが、私たちの日常にそっと優しさを加えてくれます。
私自身も、この本を読んでから、料理をする時間やモノと向き合う瞬間、そして自分自身との対話の時間が少しだけ変わりました。
「なんとなく」ではなく、「今この瞬間をていねいに生きよう」と思えるようになったのです。
忙しい毎日の中でも、ほんの少し心を整えるだけで、暮らしはやさしく変わっていく。
そんな実感を与えてくれた一冊でした。
気負わず読めて、でも確実に自分の内側に残る言葉に出会える『いのちのごはん』。
丁寧に暮らしたいと感じているすべての方に、ぜひ手にとっていただきたい一冊です。
ありがとうございました。
また次回。
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